嘘つきな唇
実は、柊也とも、大学もサークルも一緒。

寧ろ、拓斗と知り合ったのは柊也を通してだった。

二人は同郷で中学も高校も同じだったと聞いたことがあった。

だから───

「就活のことで拓斗の相談に乗ってたから、あいつがどこを受けて何件内定もらったかぐらいは知ってたさ。
最終的にどこに決めたかまでは聞いてなかったけどな」

そう。だから柊也が拓斗の就職先を知っていても不思議ではない。

予想できたはずなのに、思わぬ再会に紗綾は動揺を隠しきれなかった。

「•••••••••二人の間に何があったかも拓斗に聞いたことないから俺は知らない。けど、いつからか紗綾がOB会にも一切顔を出さなくなったのは少なからず、拓斗が関係しているんじゃないかとは思ってた。
んで、今日確信したよ」

柊也の言葉に自嘲気味に口元を歪める紗綾。

「拓斗に会いたくないから拓斗が参加するかもしれないOB会にも顔を出さなくなった。確か俺たちが入社して三カ月経ったころか?えーと6月の定例OB会だったな。紗綾が最後に参加したのは。あのときは、拓斗もいたよな」

あれから二年。

“紗綾!―――”

忘れようと。忘れたいと思っていたのに―――。













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