嘘つきな唇
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「おかえりー。意外と遅かったね」

結局、お昼を缶コーヒー一杯だけですませてしまった紗綾は柊也との会話でさらに気分が落ち込んでいた。

そんな紗綾の様子に特に気づかない千里が嬉々とした表情で話しかけてきた。

「新入社員の子!さっき来たよ!紗綾のアシスタントになるんだってね!なかなかのイケメン君だったわよ。もう会ったんでしょ?」

ああ。なにも知らないとはいえ、今はその話題は避けたいのに。

頭を抱えそうになった紗綾はそれをギリギリの理性で留めて、引きつりながらも笑顔を見せる。

「うん。休憩室に行く前に部長たちから紹介された。ていうか知り合いだった」

もうすでに、部長や蒼士には知り合いだとバレてしまっているのだから、ここで千里に知らないと言うほうが不自然になると思った紗綾はそう言うしかない。

「えぇえ?そうなの?」

「うん、まあ。サークルの後輩だった」

「マジか!世間は狭いねー」

「だね」

けらけらと笑う千里の横でそう相槌を打ちながら、溜め息が出そうになるのを飲み込むのに必死だった。


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