嘘つきな唇
午後からの仕事は全く集中できず、ミスしなかったのが不思議なくらいだった。

来週からは拓斗がやってくる。

同じ空間にいることに耐えられるのか、というより、アシスタントとなると社外社内に留まらず、会社にいる限り、ほぼ一緒の行動をすることになる。それを考えるといまから憂鬱になる。

結局、さほど進まず、紗綾は 20時を過ぎたところでパソコンの電源を落とした。

金曜日だからか、企画業務部のフロアには数人しか残っていなかった。

蒼士のデスクもキレイに片づけられている。

あのあと、一度戻ってきた蒼士は、部長とともにまたすぐ出て行った。

ボードを見ると取引先から直帰と書かれている。



今週はお互いに忙しくて週末も約束できなかった。

でも、ちょうどよかったのかもしれない。

蒼士と拓斗の顔を思い浮かべて、今日何度目かわからない溜め息を吐き出して紗綾は重い腰を上げた。









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