嘘つきな唇
「•••週末、泊まりに行くわ」

そっと蒼士の胸に頬を当てると、蒼士の手が紗綾の後頭部を撫でる。

見上げると蒼士の顔が近づいて、ゆっくりと重なる唇。

何度かお互いを確かめるように軽く合わさって、それから蒼士は少し遠慮がちに口内に舌を這わし始める。

優しく、紗綾を慈しむように。

「紗綾•••」

キスの合間に愛おしいと言いたげに蒼士は紗綾の名前を呼ぶ。

「―・・・んっ」

愛している。

愛しいと思う。

「•••••紗綾」

「──」



仕事もおしゃれも、恋愛も。
努力している。
完璧な彼氏に満足している。

なのに、どこか不完全な想いを持つ自分がいることも、紗綾は胸の奥底で自覚していた。





















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