高校生ー揺れる関係ー
「はい、着いたよ。」
と、私はふてくされたように【前田】と書かれた私の家の表札を指さした。
栄一はそれ満足そうに笑って、「よしっ」と言った。
そして、帰ろうとしたから、私はそれを見逃さず栄一の肩に手を置いた。

「どこ行く気?」

「帰る。」

「ちょっと待ってよ。」
と言って、無理やり家に入れた。

「ただいまー。
栄一、ちょっと待ってて。
そこから動いたら、まぢキレるからね。」
と言って、私は栄一を玄関に置いて、奥の方に行った。

「え・・・ちょっ・・置いてくなって。」
と、栄一の声は私に届く訳もなくどこかに消え去った。

「あれぇーお母さん?お父さん?麻衣?
どっか行っちゃったのかな?」
と、私は家じゅうまわって家族は探した。
そして、何処捜してもいないから置いてきた栄一のとこに行ったら、放心状態の栄一が居た。

「なにやってんの?栄一。」

「精神統一。」

「ウソ臭い。
てか、上がって。」

「なんでだよ?!」

「は?
玄関寒いし、1人じゃあ寂しい。」

「いや、知らない、知らない。
てか、親は?」

「ん~、どっか出掛けてる。
え、何? もしかして、変な気遣ってたの?
別に気遣わなくていいよ。」

「そういうわけにいかないだろう。
なんだ・・手土産くらい買ってこればよかった。
失敗した。」

「いや、要らない要らない。
ご心配なく。
お気持ちだけありがたく頂きます。」

「お前が良くても、お前の親はよく思わんだろ。」

「大丈夫、大丈夫。
私の親、気持ちだけで満足するタイプだから。」

「はぁー・・・また近々出直すわ。」

「へ?
また来る気なの!?」

「その予定。」

「えぇー嫌だ。」

「なんだそれ?!
そんな反応するくせに家上がれっておかしいだろう。」

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