BABY BABY
「もう、パパったら」
先程とは別人のように声を高くして喋る凛の声が聞こえた。
驚いてしまった。
さっきまで泣いていた少女が、あんな風に喋れるのか。
そう思ってると、扉が開いた。
「どうも、先生」
城島医師と、凛。
凛は父の腕に自分の腕を絡ませ、とても親しげな親子に見える。
ふつう高校生にもなると、父親を嫌がってくるようなものだと思っていたが…
そういえば母親を見ていないが、父子家庭だろうか。まあ、これも聞くもんじゃないか。
「仲がよろしいんですね」
思わず言ってしまった。
「はい」
凛が嬉しそうに答える。父の顔を見上げて、にっこりと笑う。
こんな顔もするのか…と思うと、なぜか胸がどくんと大きく鳴った。
城島医師は、まったく…と呟いて凛の頭を撫でた。
「では、この辺で失礼します」
「はい。今日はありがとうございました。凛も言いたかったことが言えたみたいで」
「それはよかったです。また何かあれば伺います」
「お願いします。話し相手がいると凛にもいいと思うので。よかったら連絡先を教えてください」
渡されたペンで、紙の切れ端に電話番号を書いて渡した。