BABY BABY
コトン、と廊下の方で音がした。
――――凛だろう。
「やっぱり、いますよね」
城島医師は答えなかった。
俯いたまま、ドアの前に立っている。
「そこをどいてください」
「…駄目だ」
「どいてください!」
怒鳴ってしまった。
生徒の保護者相手に。
城島医師は、ふっと笑った。
「…見てみるがいいよ、きっと君は逃げ出すはずだ」
そう言うと、ドアを開けた。
きつい臭いがさらに酷くなる。
廊下に出ると、すぐそばに凛が横たわっていた。
薄暗くてよく見えない…が、服を着ていない。裸だ。
「…せんせ……」
「城島…!?」
思わず目を逸らしてしまった。
裸を見たせいではない。
無数の傷跡が、凛の体に刻まれていた。