BABY BABY
「あ、あの、森里さん」
以前から結芽のことを好きだと言っていると噂の、隣のクラスの男子だ。
「…何?」
「今日の放課後、話したいことがあるんだけど…用事とかある?」
「部活…あるけど」
「じゃ、じゃあさ、部活前にちょっと中庭に来て欲しいんだ…」
友達の顔を見ると、にやにやと笑って男を小突いている。
男は顔を真っ赤にさせて、キラキラとした目で自分の返事を待っている。
なんとなく理解はした。
「…わかった」
「ほ…ほんと?じゃあ待ってるね!」
ぱあっと明るい笑顔を見せて、自分のクラスに戻っていった。
何を言われようと、何をされようと…あたしが先生を好きなのは変わらないのに。
でも話を聞くことも断るのは、少し悪い気がするし。
「さっきの人、すっごいかわいかったね?子犬みたいでさ」
「…そうだった?顔、あんまり見てなかった」
友達は、そーかいそーかいと言って席に戻った。
つまらない。
先生のいない学校なんか。