BABY BABY
「すみません。ありがとうございました…」
立ち去ろうとしたとき、ちょうど看護婦が近くの病室から出てきた。
「…看護婦さん」
少女が呼び止めると、看護婦は目をぎょっとさせ、すぐに不自然な笑顔を作った。
「あ、あら。どうかしたの?」
「この人、待合室まで案内してあげてください。迷ったみたいです」
「え、ええ…」
看護婦は困っているようだ。
「あの…お仕事中とかじゃないですか?忙しかったら口頭で…」
「…いいえ、大丈夫。さ、早く行きましょう」
背中を押されるようにして歩き始めた。せっかちな看護婦だ…少女にお礼も言えてないのに。
少女のほうを振り返ると、少女は笑顔で小さく手を振っていた。
嬉しくなり、手を振りかえした。
【精神病棟】…病棟の出口のプレートにそう書いてあった。