ナギとイザナギ
「そりゃあ、怨霊の類かも知れん」
家に帰ってイザナギさんに尋ねたら、そう答えが返ってきた。
「おんりょう、ですか。でもなんだって、さぎりにとりついたんだろう」
「わからん。まあ原因があるはずだな。まずはそれを突き止めないと。しかし雨の日はダルイので明日にでも調査をするとしよう」
神様も雨はお嫌いなんですね。僕は初めて知りましたよ。ええ。
「あのう、イザナギさん。僕、どうしても聞きたかったんだけど」
「なんだね」
「どうして、僕やさぎりにイザナギさんが見えて、大地には姿が見えないんだろうって」
イザナギさんは、眠そうな顔で、
「ああ、それか。だってな、やつの氏神は、俺が苦手な出雲の、それも、スサノヲの末裔だからだよ」
といって頭をかいていた。
「大地が嫌いというわけじゃないんだが。ま、機会あらば俺が見えることもあるだろうがな」
「なんてアバウトなんだ、神々の世界」
僕は思わずツッコんでしまった。
「でもなんで出雲とか、スサノヲだと、まずいの」
僕の質問にイザナギさんは膝を強くたたき、痛そうに顔をゆがめていた。お茶目のつもりだろうか。ほんとに馬鹿だな、このひとは。
「よっくぞきいってくれった。いててえ。ああ、そうさな。何から話して聞かせよう。ナギは出雲の神話を知ってるのかな」
「さあ、あんまり知らないかも」
「読書家のお前には珍しいな。まあいい、あのな。スサノヲという神は、俺の産んだ次男なんだ。正確には離縁した妻のイザナミが産んだ第二子ということなのだが」
「第二子って、ああ。二人目の子供か」
「そそ。そして、そのスサノヲは長女である姉の天照大神に歯向かって、高天原という天界を追放されて、出雲へ旅立つと。こういうわけだ」
そのあたりのくだりは、死んだ宮司のじいちゃんに聞いた気もするけど、詳しくは知らなかったからね。このレクチャーはちょうどいい。
「まあ、だいたい理解しました。ありがとうございます」
「うむ。そんなところか。とりあえず、さぎり本人から話を聞いたほうがよさそうだな。連れて来い、ナギ」
「なっ、何で僕が。さぎりは、いつだってイザナギさんに会いにくるんだよ。あなたがいったらいいじゃないかっ」
「神の詔は絶対だぞ、ナギ。いいな、これは命令だ。連れてこいよ」
なっなにが、みことのり、だよ。こんなときだけ威張りやがってっ、ムカつくっ。
家に帰ってイザナギさんに尋ねたら、そう答えが返ってきた。
「おんりょう、ですか。でもなんだって、さぎりにとりついたんだろう」
「わからん。まあ原因があるはずだな。まずはそれを突き止めないと。しかし雨の日はダルイので明日にでも調査をするとしよう」
神様も雨はお嫌いなんですね。僕は初めて知りましたよ。ええ。
「あのう、イザナギさん。僕、どうしても聞きたかったんだけど」
「なんだね」
「どうして、僕やさぎりにイザナギさんが見えて、大地には姿が見えないんだろうって」
イザナギさんは、眠そうな顔で、
「ああ、それか。だってな、やつの氏神は、俺が苦手な出雲の、それも、スサノヲの末裔だからだよ」
といって頭をかいていた。
「大地が嫌いというわけじゃないんだが。ま、機会あらば俺が見えることもあるだろうがな」
「なんてアバウトなんだ、神々の世界」
僕は思わずツッコんでしまった。
「でもなんで出雲とか、スサノヲだと、まずいの」
僕の質問にイザナギさんは膝を強くたたき、痛そうに顔をゆがめていた。お茶目のつもりだろうか。ほんとに馬鹿だな、このひとは。
「よっくぞきいってくれった。いててえ。ああ、そうさな。何から話して聞かせよう。ナギは出雲の神話を知ってるのかな」
「さあ、あんまり知らないかも」
「読書家のお前には珍しいな。まあいい、あのな。スサノヲという神は、俺の産んだ次男なんだ。正確には離縁した妻のイザナミが産んだ第二子ということなのだが」
「第二子って、ああ。二人目の子供か」
「そそ。そして、そのスサノヲは長女である姉の天照大神に歯向かって、高天原という天界を追放されて、出雲へ旅立つと。こういうわけだ」
そのあたりのくだりは、死んだ宮司のじいちゃんに聞いた気もするけど、詳しくは知らなかったからね。このレクチャーはちょうどいい。
「まあ、だいたい理解しました。ありがとうございます」
「うむ。そんなところか。とりあえず、さぎり本人から話を聞いたほうがよさそうだな。連れて来い、ナギ」
「なっ、何で僕が。さぎりは、いつだってイザナギさんに会いにくるんだよ。あなたがいったらいいじゃないかっ」
「神の詔は絶対だぞ、ナギ。いいな、これは命令だ。連れてこいよ」
なっなにが、みことのり、だよ。こんなときだけ威張りやがってっ、ムカつくっ。