ライトグリーン・スカイ
そう言ってさっきとは別の笑みを浮かべる。やっぱり相槌だけでも打って欲しかったようだ。

そういえば尋の笑顔以外の表情をあまり見た事がない。

泣いた姿も小さい時だけしか見た事ないし、怒る姿に至っては1度もない。

「木葉?」

尋の一言で私は我に返る。その間、何を話していたか全く分からなかった。

「ぼーっとしてどうしたの?具合でも悪い?」

「な、何でもない!近寄らないで、バカッ」

顔を近づけてくる尋に驚いて、心臓が止まってしまいそうになった。

「そう?なら良かった」

栄兄ちゃんやお兄ちゃんならこう言う時、逆ギレをするか、からかうだろう。

彼はどちらもしなかった。また微笑むだけ。怒る気力も失せてしまう。

「そう言う見下す感じ?それだから尋は嫌い。嘘も吐かれたし」

心の中で呟いたつもりの言葉が、音になっているのに気付いたのは、尋の表情を見た後だった。
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