ライトグリーン・スカイ
突然尋が立ち止まり、ある一点の方向を見つめていた。

その先にあったのは緑の葉が茂った桜の木。あの時私が見ていたものだった。

ああ、そうか。彼はこれをじっくり見るのは久しぶりの事なんだ。

見つめる尋と桜の木。ふわりと風が吹き、静かな空気だけが漂って。

まるで、私や栄兄ちゃんとは別世界にいるように思える。

邪魔をしてしまいそうで、私は全く声をかける事が出来ないと言うのに…

「ぼやっとしてるんじゃねーよ」

栄兄ちゃんはお構いなしにそれを壊した。

呆れてしまいそうだったけど、こんな所に長居する訳にもいかない。

近くにいた小さな子達が、こっちをじーっと見つめている。

虫かごと網を持っているから、きっと蝉を捕まえに来たのだろう。

その中の1人の男の子を何処かで見た気がしたけれど、どうしても思い出せなかった。
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