ライトグリーン・スカイ
写真を撮る隙も与えぬまま、1番最後に1番大きな花火が上がる。

流れ落ちる姿もまた綺麗。パラパラと溶けて、消えて行く。

あっという間の出来事だった。

花火に夢中で気付かなかった。手に何か暖かい感触がある事を。

尋の手。何故こんな事をするのかが分からなかった。

「尋?どうかしたの」

「ああ、ちょっとね……」

街灯に照らされる尋の顔は少しだけ青く、悲しそう。

そう言う表情をする理由が私には何となく理解出来る。

すっかり忘れていたよ。“あの事”を。もう、尋にとっては最後だったんだ。

この花火を見ると言う事は。もう私と一緒に見る事もない。

2人きり(と言うのはちょっと違うかもしれないけれど)で見る、

最初で最後の花火だったのだ。
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