空と海
鏡の前に立つ私、幾松さんに言われたようにシャキッとしたような気がする
「幾松さん...何から何までありがとうございます」
「ええんよ、何よりこれは桂はんのためや...あの人の喜びはうちの喜び...こないうちがあの人の役にたてやんやと思うとうちは嬉しいのどす」
「幾松さん...」
誰かを思う女の人は綺麗になる
と聞いたことがあるが、幾松さんを見ていると本当にそうなんだなと思う
「あ、そうやった!あんたは、親が病にかかってしもうて、薬代を払うために、島原に入ったって事になってはりますから。そう言えばええ。まぁ、まるで別人みたいに別嬪さんになったし、あんたかどうか分からんと思うけどなぁ。」
「え...そんなっ!!」
幾松さんからそう言われて嬉しくなって、顔を赤くそめる
外を見ると、もう夕暮れ時で、島原には小さな灯りがポツポツとつき始める
「さあ、長い夜の始まりや...」