その指に触れて
「遥斗」

「ん?」

「指、触ってみてもいい?」

「へっ?」


デッサンの手を止めて遥斗はあたしを見て瞬きする。


「あ、デッサン終わってからでいいんだけど」

「いや、もう終わったけど……。万梨ちゃん、今日どうかしたの?」

「まあ、あたしがこんなに積極的になることは珍しいけど」


いつもは他愛のない話ばかりしてるし。


やっぱりまだ動揺してるのかな。


「でも、触りたいのはずっと前から思ってたから」

「それ、どんなふうに捉えればいいの?」


遥斗が苦笑している。がつがつするあたしは嫌なのか。


でもめげない。


「あたしに告白させたいの?」

「いや、そういうわけでは……」

「嫌いだったらこんなこと言わないし……」


言っている間に顔が熱くなる。


くっそう。なぜか遥斗にしてやられた気分。


告白したけど、あたしだってまだ恥ずかしいんだよ。付き合ってるわけでもないし。返事はいいとは言ったけど、でも遥斗の気持ちは気になるし。


遥斗の一言で困惑するあたしを見て、遥斗はくすっと笑った。


「どうぞ」


遥斗が右手をあたしに差し出す。


遥斗って、時々わからなくなる。


< 115 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop