その指に触れて
「俺の指の何がいいの? 普通だと思うけど」


遥斗はあたしの手から自分の指を離してぶらっと振った。


あー、もうちょっと見ていたかった……。


「全部。遥斗の指を為している全部が好き」


あたしが満面の笑みで言うと、「あんまりいい趣味とは言えないと思うけど」なんて、遥斗は苦笑した。


「仕方ないじゃん。遥斗の指に欲情するんだから」

「だいぶアブノーマルでしょ。万梨ちゃんの好み」

「……本気なんだけど」

「さっきからほんとどうしたの? 今日は特別
おかしい日なの?」


いつもなら滅多にしない、あたしの頭に手を置いて顔を覗き込むのを遥斗はやってのけた。


あたしは本気で心配されているらしい。


「……かもね」

「ちょっと万梨ちゃん、いつもならそこ食いついてくるところでしょ。何かあった?」

「や、遥斗にとってはなんてことないことだし」

「万梨ちゃんにとっては何かあるんでしょ?」


こいつ、こんなに優しかったっけ?


あたしだけじゃなく遥斗もいつもと違って見えて、あたしは軽く動揺した。



< 117 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop