その指に触れて
「……たぶん、彼女はわかってたんだ」


晃彦は顔を上げてあたしをじっと見つめた。


「……万梨子のことがまだ好きって」


その途端、ドクンッと心臓が大きく鼓動を鳴らした。


「……今更、でしょ」

「好きな奴、いるもんな」

「いるよ」

「付き合ってんの?」

「違う……」

「……辛いよな、片思いって」


晃彦は目を伏せて、あたしの首筋に吸い付いた。


「ほんと、今更だよ。別れた直後ならまだしも、浮気した相手と別れて初めて気づくんだもん」


ああ、そこ、前寝ぼけた遥斗が触れた場所だ……なんて思いながら、晃彦のキスを受けていた。


ほんと、片思いって辛い。


先の見えない未来に思いを馳せながら、一人の男を好きになる。


「……万梨子」


晃彦がじっと見つめてくる。瞳が熱っぽく潤んでいた。


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