その指に触れて
「……あたしが簡単に足開くとでも?」

「思ってねえよ、今更」

「じゃあ……」

「キスは、拒否らないで」


そう言って、あたしに唇を寄せてくる。


幾度となく交わした唇が、再び降ってくる。


啄むように唇を吸われ、あたしはだんだん体の力が抜けていった。


晃彦はいつもこう。キスであたしに抵抗させなくする。


舌が入ってきた時も、あたしは抵抗しなかった。


付き合ってた頃はいつも抵抗を示していた。他人の舌がどうしても耐えられなかった。


でも受け入れてしまうと、案外悪くないかもと思った。


晃彦があたしの舌を吸い上げて、体の中が熱くなる。


あたしが求めていたのはこれなのか。


わからない。


体がベッドに沈んでも、あたしは抵抗する素振りを見せなかった。


「万梨子……」


いくらか困惑したらしい晃彦の声にもあたしは目を閉じて黙ったままだった。


目を開けると、あたしの上で首筋に顔を埋める晃彦と、窓から見えるオレンジ色の空が見えた。


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