その指に触れて
指が、熱い。


詳しく言えば、右手の指だけが熱に晒されている。


「遥斗?」


あたしは顔を上に向けた。


そこには、あたしの指に口づける遥斗が見えた。


何だ、これ。


指の先から付け根まで、執拗に唇が這っていた。


人差し指と中指の間の付け根に遥斗の熱い吐息がかかり、唇がそこに触れた瞬間、その指から肩にかけてびん、と痺れた。


同時に、体の奥が熱を持つ。


「……指を食べるなって言ったのはどこの誰だっけ?」


あたしがぽつりと呟くと、はっとした遥斗はぱっとあたしの指を離した。


「……今、何した?」

「ご、めん、万梨ちゃん……」

「何したって聞いてんの」

「万梨ちゃんの指に、キスした」

「なんで?」


責める気など毛頭ない。ただ、あたしは体を起こして遥斗と向かい合った。


「荒れてる、から……」

「は?」


遥斗は俯いてぎゅっと唇を噛み締めた。


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