その指に触れて
「……汐香」

「何?」

「彼氏とラブラブでいいね」

「まあね。ちなみに、昨日休んだのは、うちの旦那が昼までセック……」

「あー、はいはい、わかりましたから。心身共にラブラブなんですね」

「瞳に悪影響だからね。万梨子ですら真っ昼間からそんなこと言わないからねー」

「睦実、当たり前でしょ。まだなんだから」


瞳が顔を真っ赤にしているのを汐香に指摘され、あたし達は笑った。


嘘、だけど。


嘘をつきつづけるのは苦しい。


あたしが怖いのは、三人とこの関係を壊すこと。


遥斗のことも、晃彦のことも、包み隠さず言ってしまえばどれだけ楽になれるのだろう。


でも、それを代償に三人との関係が悪くなるのは必至だ。


でも、隠している間にもその溝は徐々に大きくなる気がして。


どうしたらいいのかわからない。


臆病で、卑怯で、図々しい最低な人間だ、あたしは。


こんなあたし、地獄という地獄まで落ちてしまえばいい。


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