その指に触れて
もう関わらない。


そうは言ったけど、遥斗を忘れる日は一度もなかった。


隣のクラスだから、お互いが移動教室の時は遥斗の姿を見つけたし、廊下で遥斗が友達とじゃれている光景は教室の中からでも見れた。


遥斗と目が合うことは一度もなかった。


あたしがどれだけ遥斗をガン見しても、視線が絡まることはただの一度もなかった。


「万梨子、そろそろ気持ち悪いよ」と汐香に言われても見続けた。


それしか、あたしは遥斗と繋がることはできないのだから。


夜中、何度も泣いた。


ふと目覚めたら枕が濡れていたり、寝転んでいると目から液体が流れ落ちることもしょっちゅうだった。


人は無防備になると、感情が剥き出しになるらしい。


あたしはそれほど遥斗が好きだったのか。そう思って、自分を嘲笑う代わりに泣いた。


遥斗が好き。


伝えられないけど、大好き。


その思いは、三年生になっても変わらなかった。
 

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