その指に触れて
「もう汐香、こんな田舎の駅で迷子になるって、どんだけ方向音痴なのよ」

「仕方ないじゃない。いつも彼氏に着いていくだけだったんだから」

「遅刻した子は、箱入り娘だったってわけね」

「でも意外。万梨子が東京の大学なんて」

「瞳、それどういう意味?」

「万梨子は一人暮らしできないタイプだと思ってたから」

「失礼な。あたしだって、やるときはやるよ」


次の年の三月下旬。仲良し四人はそれぞれの進路に進んだ。


瞳は地元の国立大学、睦実は隣県の公立大学、汐香は短大。 


そして、あたしは東京の公立大学に進学が決まった。


今日はあたしが出発するから、みんなが見送りに来てくれた。


「……ねえ、万梨子」


睦実がやけに重々しい口を開く。


「何?」

「よかったの? ……山田くんのこと」

「いいも何も、遥斗はとっくに東京にいるよ、たぶん」

「まさか本当に山田くんを追いかけて東京に行くとは」


汐香がやれやれと肩を竦める。


「あのね汐香、W大とM大はだいぶ離れてるから会うことはありません。しかも追いかけてないし。あたしはM大で学びたいと思ったから行くだけ」

「でも、山田くんのことも多少はあるでしょ」


汐香がニヤッと笑ってくる。ふてぶてしい奴だ。


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