その指に触れて
遥斗は結局、W大の指定校推薦を利用し、学年で誰よりも早く大学生になれたらしい(もちろん本人から聞いたわけではなく、風の噂で聞いた。この手の噂は妙に早く、広範囲に広まるのだ)。


あたしが進学するM大の臨床心理学部は、心理学全般を研究するという、前々から興味があった心理学を学ぶのにうってつけの大学だった。


決して遥斗が東京に行くのを追いかけようとしたわけではない。その要素がないとは言いきれないけど。


あたしは結局、W大には合格しなかった。私大だからいくつ受けても構わないから挑戦圏の大学として一般入試で受験したけど、どこの学部からも合格通知は来なかった。


入試直前の模試ではD判定で、C判定を取ったのは五月のあの時だけだったから、当然といえば当然だ。五月までは本格的に受験勉強を進める人がまだ少ないため、少し勉強すればいい判定をもらえる。逆に、みんなが部活を引退して受験勉強に専念すると、いい判定は簡単には取れなくなるのだ。


とりあえず、あたしは遥斗には遠く及ばない存在なのだと痛感した瞬間だった。


どっちみち第一志望の大学に合格したのだから、文句は言えないか。


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