その指に触れて
────…


「じゃあ、また連絡するね」

「えー、また会うの?」

「あんたね」


あたしは髪をかきあげて、耳の下の赤い跡を指差した。


「こんなとこにキスマークつけられて彼氏いませんとか、どんだけ嘘下手くそな人なの。わかる? キスマークってのはね、こいつは俺のもんだっていう証なの。それをあんたがつけたってのはまあ……」

「ま、万梨ちゃん!」


顔を真っ赤にさせてバタバタと慌てる遥斗はやっぱり可愛い。


「遥斗って、あたしのこと好きなんだねー」

「ま、万梨ちゃんだってつけたじゃん……」

「あたしは鎖骨の下だもん。がっつりVネックじゃなきゃ見えないもん」

「いや、だからって……」

「しかも最初につけてきたのあんただからね。いやー、あんなこともあるんだね、草食系があたしを抱くの……」

「わかった、わかったから! 頼むから駅の真ん前でそういうこと言わないで!」


朝っぱらから遥斗には刺激が強いか。


数時間前までは、あんなに裸を見せあってたってのに。


遥斗の指を見て、その指であたしは翻弄されたのだと不覚にも恥ずかしくなる。



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