その指に触れて
あたしが眉間に皺を寄せて山田くんを睨み付けていると、山田くんは「えっと……」なんて慌てだした。


「嵌めたよね? あたしを」

「いや、そうじゃな……」

「どこがそうじゃねーんだ、この草食系男子!!」


あたしが目の前の男の胸ぐらを掴んだら、潤んだ目で「ひええええ」と情けない声を漏らした。


こいつ、絶対彼氏にしたくない。


「自分が間違えたくせに嵌めるとはええ度胸じゃのう。そういうの、一歩間違えたら警察行きですよ。鉄格子の中に入れられるんだよ。わかってんのか?」

「す、すみません、すみません。許してくださいっ」


今にも涙がこぼれそうなうるうるの目で見降ろされると、なんだかこっちが悪いことをしてしまった気分になる。


あたしが警察行きになりそうな雰囲気で、あたしは胸ぐらを掴んでいた手を離した。


「怒ってる……よね?」


まだ涙目のままの山田くんがあたしの顔を覗き込む。


「怒ってる。嵌めた理由を教えなさい」

「いや、嵌めたつもりは……」

「あ‶!?」

「……すみません」


なんか、怒ってることがバカらしく思えてきた。


< 37 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop