その指に触れて
「本当にごめんなさい。俺が悪かったです」

「別に謝られたくて来たんじゃないから。いいよ、もう。あたしも都合よかったし」

「え?」

「こっちの話」


あんたが呼び出してくれなきゃ、あたしは今頃家で寝腐っていたのだ。あたしを人間らしい生活に引きずり込んだのは、こいつだ。


「お詫びはジュースでい……」

「あっ!!」


目の前の男が急に大声をあげた。思わず一瞬目を見開いてびっくりしてしまったほどの声だった。


「何、一体……」


突然、目の前の男にあたしの両手が握られた。そのせいで二人の体が近づいて、暑苦しい。


「こ、この時期にそういうことは暑苦しいから、やめてもらいたい……」

「モデル、してくれない?」


口を開いた目の前の男は、口は真一文字に閉じられたまま、目はきらきらと輝いていた。


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