その指に触れて
「すっごい綺麗……」


その絵から目が離せずに呟いたら、あたしの横で山田くんが声を上げて笑った。


「万梨ちゃんに言われるとなんか嬉しい」

「まだ会って二回目でしょ」

「万梨ちゃんの言い方、なんかツチノコを見つけたみたいなんだもん」

「ツチノコ、まだ見つかってないけど」

「素直に言ってくれて嬉しいってことだよ」

「ほんとに綺麗なんだもん。ね、山田くんは賞取ったりするの?」

「俺なんかまだまだだよ。俺よりうまい人はいくらでもいるから」


隣で山田くんが力なく笑った気がした。


やば。余計なこと言ったかな。


「ご、ごめん……」

「ま、俺は根っから競うことが嫌いな質だから、自分が描きたいものを描ければいいって感じだけどね」


山田くんが横でははっと笑って、立ち上がって教室を出て行ってしまった。


……まずいことを言ってしまった。


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