その指に触れて
山田くんが戻ってくると、なんだか気まずい雰囲気が流れる。


「あ、あの……」

「これ、もうちょい仕上げるからそこ座ってて」


山田くんが真顔で傍の椅子を顎でしゃくった。


……なんか、怒ってる?


口を開く気になれなくて、山田くんを目の端で捉えながらそろそろと椅子に座った。


やっぱり、無神経だったかな。


勉強以外勝負事に関わってこなかったあたしが言ってしまったことは、もしかしたらあたしが思うより山田くんの心を深くえぐってしまったのかもしれない。


ここから見る山田くんの顔は、固く引き締まっていた。


思ったより鼻筋が伸びていて、女の子が羨むほどぷるんとした唇が半開きになっている。


メガネのフレームに隠れて瞳は見えないけど。


パーツの一つ一つは整っている。


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