その指に触れて
「冗談に決まってんじゃん。正直、万梨ちゃんくらいのモデルってなかなか頼めないからさ」


……それ、誉めてんの?


なんか複雑。


「まあ、モデルも一ヶ月の辛抱だから頑張ってよ」

「一ヶ月!?」


ああ、もう目が回ってくる。


30日×20分もじっとしてなきゃならないのか。ああ、できる気がしない。


飲み物に釣られて軽い気持ちで引き受けるんじゃなかった。


いや、この時期飲み物は生きていく上で重要だけどさ。


「え、毎日じゃないよ。土日は学校来ないし、万梨ちゃんの部活……何曜日だっけ?」

「水曜日」

「土日と水曜日は休みにするからさ。30日もモデル頼んだら、俺の財布赤字になるし」

「赤字に追い込んでやりたい」

「え、やめて」


ぶっちゃけ、家庭部なんて家庭科室でお菓子作りするだけだから行かなくても誰も文句言わないけどさ。


……さすがに遥斗の財布の赤字は防ごう。


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