その指に触れて
「タピオカオレンジ。タピオカ多めで」


購買のレジで大好きなタピオカドリンクを注文する。


「え、ミルクティーじゃなかった? しかも多め?」

「何よ、苦手なことをしたんだらご褒美くらいちょうだいよ」

「一日200円だけでも十分ご褒美だと思うけど……」

「何?」

「なんでもないです……」


遥斗はしぶしぶ余分な30円まで払った。


「万梨ちゃんといると、直に破綻するよ……」


購買を出ると、遥斗が深いため息を吐いた。


「別にいいよ。自販機のジュースでも」

「いいの!?」

「モデルの時間が減るだけだから」

「万梨ちゃん、一日20分以下で、一ヶ月で描き上げるのはきついって……」

「わかってるよ、あたしでもそれくらい」

「じゃあ……」

「ご褒美、毎日もらわなくていい」

「え?」


太いストローがタピオカを吸い上げる。


遥斗は目をしばらくしばたかせていた。


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