その指に触れて
遥斗が椅子に座ると、周りの空気が一瞬にして変わる。


遥斗の目つきが変わるのだ。


よくわからないけど、絵を描くことに対して本気なのだと思う。


「万梨ちゃん、いつも教室でも外見てんの?」

「窓際の席の時ね。面白いよ、うちの教室からケヤキの木が見えるから、季節によって色が違うんだよ」

「なるほどね」

「いつも見てる時はこんな感じ」


窓のサッシに肘をついて窓の外を見る。


今日は雨。地面も建物も濡れていてジメジメしている。


今目の前にしている窓も結露で外が見えない。


夏の終わりだから余計に湿気も多くて、ベトベトしているのがあたしは嫌いだ。


「……遥斗?」


ちらっと目線を動かすと、遥斗は既にキャンバスに手を動かしていた。


……早っ。


慌てて目線を元に戻す。


描いている遥斗には話し掛けるなという雰囲気があるのだ。


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