その指に触れて
「ごめんね、万梨ちゃん……」

「もういいよ。疲れてるでしょ」


遥斗はしばらくあたしに頭を撫でられていた。


遥斗の髪の毛はふわふわしていて、ずっと触っていたい。


謝られたのは少し辛かった。


あたしに触れたことを後悔したのだと。


でも、嬉しかった。


あたしの絵をそんなになるまで描いてくれたんだって。


自惚れてるのはわかってる。


それでも顔がにやけてしまう。


「万梨ちゃんって、お姉さんみたい」

「は?」


遥斗が顔を上げてゆっくりと微笑んだ。


あたしの心臓が騒ぐ。


うわ……女の子顔負け。


さっきのあたしの微笑みなど一瞬で粗大ごみ行きだろう。


「お姉さんみたいにね、しっかりしてんの」

「別にしっかりはしてないけど……」

「年上っぽいよね。色気とか」


……ん?


「なんかね、容易に触れないというか」

「おい、それどういう意味?」

「あ、変な意味じゃないよ。触ったらどうなんだろうって」

「はあ?」


話の流れがわからない。


「……でも、触ってみたいかな……うわあっ!」


小声だった遥斗が教室の隅まで聞こえるくらいの声で叫んだ。


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