その指に触れて
「ま、万梨ちゃん……?」


遥斗があたしの下で弱々しい声を発した。


「それ、本気で言ってんの?」

「え?」

「触りたいとか、本気なの?」

「あ、あの、えっと……」


遥斗が困惑している。


あ、まずいなとあたしが初めて思ったのはこの時だった。


細い手首を掴んで床に押し付けて、遥斗の上に馬乗りになる。


つまりあたしは遥斗を押し倒していた。


本来ならば逆の立場。


でもあたしはこいつを上から眺めたい。


女がそう思って何が悪い。


もうあたし、本格的に変態だわ。


「万梨ちゃん、ちょ、ちょっと落ち着いて……」

「この状況で落ち着けると思うの?」

「無理でも落ち着いて」


懇願するように遥斗があたしを見上げる。


ほら、遥斗はあたしを煽る。


そんな顔されてはい、そうですかなんて納得するはずない。


「じゃあ、抱きなさいよ」

「ま、万梨ちゃん?」

「こうなったのはあんたの責任でしょ」

「言ってることが支離滅裂なんだけど……」

「遥斗がやらないなら、あたしがやる」


あたしは遥斗に顔を近づけた。

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