MYG倶楽部 〜まるで夢のような学校生活のために〜
「ワンワンワンワンワンッ」


一頭の巨大な犬が、傷と大志の方へ駆けてきた。

そして二人の前まで来ると、急停止して尻尾をブンブン振り回す。



「ビル・ゲイツ!!戻って来たのか!!」


大志は慌ててその巨体に駆け寄ると、もう逃げないように首輪をしっかり掴まえた。


「ワンワンワンワン!!!」


「………ん?」


突然傷は小さな違和感を感じて、舌を出して暑そうにしている犬に近づいた。


「……大志。こいつ、ビルじゃないぞ」


「え?」


傷の言葉に驚いた大志は、目を見開いて自分を見上げているデカワンコをじっと見つめた。


「………………ちっちゃい。
いや、十分デカいけどビル・ゲイツよりちっちゃい」

「あぁ。多分まだ子犬だな」


「マジで?このデカさで?」


ビル・ゲイツは大型犬のゴールデンレトリバー(成犬)よりずっと大きかったが、この犬はせいぜい柴犬(やっぱり成犬)をずっと大きくした位のサイズだった


「いや、どっちみち‘ずっと大きくした’だけじゃん」


「キュゥーン、キュゥーン……」


「? どうしたんだ、ビルJr.」


「ビルJr.!?傷くん、いつの間に名前つけたの」



「さっき。ビルJr.、他の皆はどうしたんだ?」


回りを見回しても、ビルJr.以外のデカワンコは見当たらなかった。


「ワンッ」


ビルJr.は一声鳴いて大きな口を開けると、かぷっと傷の制服のシャツをくわえ、グイグイ引っ張り始めた。


「ビルJr.?」


「ついて来いって言ってるんじゃない?」


「向こうに皆がいるんだな?」


「ワグッ」


ビルJr.が引っ張ったまま返事をする。


「よーし、ビルJr.。俺達を連れて行ってくれ!」


「ワンワン!!」


ビルJr.はシャツを離し、先程やって来た方向へ走りだした。


二人もそれを追いかけて、再び走り出す。


「うわー、傷くんシャツがベショベショ」


「気にするな」


「ワンワンッ!!」

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