MYG倶楽部 〜まるで夢のような学校生活のために〜
傷と初めて出会ったのは、四月の入学式の日だった。

今年の春は綺麗な桜が咲いていたのを覚えている。




―――そう言えばコイツ、あの頃は周囲の人間をほとんど敵に回していたっけ。

「傷と知り合って、仲良くしようとして喧嘩して、争っているうちに事件が起こって…………」


そして、あの人達に助けられた。


傷の大切な‘家族’。


それは決していい人達ばかりではなかったかもしれない。


事実、彼らは揃いも揃って犯罪者であり、まともな人生を送ってきたとは言いがたくて。


―――でも、オレ達と傷が出会えたのは彼らのおかげであり、そこに関しては礼を言っても言い切れないのは確かだ。


「ま、俺達は一人一人がかなりの腕前だしー?二、三人でかかれば大概の組織は潰せるから、ほんとに‘家族’全員が集まる事なんて滅多にないんだよなー」


そう言う傷は、自分の家族の自慢をするただの子供に見えて。


年相応な行為に、思わず頬が緩む。


「……? 何ニヤついてるんだよ?」


「……お前って、バッカだよなー」


「ンだとコラッ」


「ワンワンッッ」


完全に忘れ去られていたビル・ゲイツ達が、不満そうに鳴いて淳夜の制服の袖を引っ張った。


「おぉっと、ごめんビル・ゲイツ。もう帰らないとな」


「俺も帰るよ。今日はマジで変な一日だった」


「あはは。ホントにな」


今日起こった最初の騒動(もちろんビル・ゲイツ達の事)を引き連れて登場した淳夜は、内心ドキリとしたのを隠しながら苦笑した。


「………また明日な、淳夜さん。ビル・ゲイツ達も」

「ワンワン!!」


傷はくるりと淳夜達に背を向けると、いつもよりゆっくり歩き出した。


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