この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「ねぇ、聞いた? 社長の奥さん、昨日の取締役会で常務に就任したそうよ」

「うん。聞いた。気の強い奥さんがついに会社の実権握ったって噂だよ。ワンマンでやりの手の社長も、奥さんには頭が上がらないってことか……」

「そうそう! 若くて綺麗な奥さんだから、社長骨抜きにされちゃったのかな? かなりのしたたか女って話しよ」

「えっ? あなた奥さん見たことあるの?」

「あるも何も……今ここに来てるわよ。さっき、1階の受付のとこに社長と居たんだから」

「うっそー! 私も見てみたい」


えらい盛り上がってるな。私には全く関係の無い話しだ。


ため息を漏らしパソコンを開けようとした時だった。内線が鳴る。


「はい、神埼です」

『人事部に行って、ウチの部署の新しい社員名簿貰ってこい』

「はぁ?」

『今すぐ持ってこい』


ガチャン……


何よ、銀のヤツ。私は雑用係りじゃないつーの!


受話器を乱暴に戻すと席を立つ。


「あぁ~めんどくせー」


人事部は直ぐ上の階か……エコと健康の為に階段にするか。でも、普通に階段上がってもつまんないし……


「えぃ!」


階段一段跳ばしだ! 


調子に乗って二段跳ばしにしたのが悪かった。足が届かずツルッと滑りバランスを崩す。


「わっ……!」


宙に浮いた体が重力に逆らえず落ちていく。


このまま頭から落ちたら即死かも……ヤダー! まだ23年しか生きてないのに~長生きしたいよ~!


ドカッ!!


「むむっ?」


思ったほど痛くない。それに、私、生きてる。


「……君」

「へっ?」

「下だよ。下……」


言われるまま下を見るとなんと、見ず知らずのおっちゃんの上に乗っかっていた。


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