この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「よ、横田さん? どうしたの?」
私がプレゼントしたストラップを握り締め、涙をポロポロ零している。
「ごめん。嬉しくて……」
こんな安物のストラップを泣くほど喜んでくれる人は多分、世の中広しと言えども横田さんだけの様な気がする。
「あ、気に入ってもらえて良かった」
すると横田さんは堰を切った様に話し出したんだ。
横田さんは随分前に離婚して、別れた奥さんに引き取られた娘がいるそうなんだけど、離婚した時に別れたっきり、もう十数年会ってないそうだ。
「もう立派な女性になってるだろうな……ミーメちゃんと同じくらいの年だから……」
「えっ? 横田さん43歳ですよね? そんな大きな子供が居たんですか?」
「あぁ、結婚したのが19歳。娘が生まれたのが20歳の時だった。若気の至りでね。出来ちゃった結婚ってヤツさ。
元妻は18歳のまだ遊びたい盛りで、娘の世話が苦痛になってたんだろうな……ストレスが溜まって買い物依存症になっちゃってね。
お金が無いのにカードで借金してまで買い物していた。それでとうとう喧嘩になってしまって離婚ってことになったんだ。
僕も若かったから彼女の辛い気持ちを分かってあげられなかった。
娘は僕が引き取ることになったのに、離婚届を出したその日、元妻は娘を連れて居なくなってしまって、それっきり……」
横田さんの話しを聞いてたら、自分の過去がダブり辛かった日々が蘇ってくる。
「似てる……」
「えっ?」
「私の両親も離婚して、父親の残した借金抱えて凄い貧乏してきたから……」
「あ、そうなの? 嫌な話ししちゃったかな? でも、ミーメちゃんからコレ貰って、まるで娘からプレゼントされたみたいな気分になってね。ついお喋りになってしまった。申し訳ない」
「いえ、横田さんが喜んでくれて嬉しいですよ」
私の言葉に横田さんは頷きながら微笑む。