この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「そうか……」
「あ、けど、華とふたりでも全然辛いとか思ってませんから。キャサリンママたちも居てくれるし、結構楽しく子育てしてるんですよ」
私はそう言って豪快に笑ってみせた。
すると突然、横田さんが私の手を握り「僕に出来ることがあったら言って欲しい。ミーメちゃんの力になりたいんだよ」なんて言うからビックリ!
なんか妙な雰囲気……
「あの、横田さん……手」
「あ、ごめん。でも、今のは本気だから……さて、今からどこ行くかな?」
今まで親切なおじさんだと思ってた横田さんが一瞬だけど、男性に見えた瞬間だった。
イタリアンのお店を出ると私のリクエストで映画館へ向かう。
普段は華とアニメばかりだから、たまには大人の映画を観たかった。コテコテの恋愛モノでウルウルドキドキしたい。
しかし、その選択が間違っていたことに気づくのは、もう少し後――
私がチョイスしたのは、恋人が病気で死んでしまうっていう涙無しでは観れない悲恋&感動モノ。
私より先に泣き出したのは横田さんだった。隣で号泣され、私は映画どころじゃない。
「ミーメちゃん、いい映画だったね。ううっ……」
「ははは……そ~ですね」
横田さんが気になって、あんまり内容覚えてないんだけど……
でも、凄く大人だと思ってた横田さんの意外な一面を見て、なんだか彼が可愛く見えた。
その後は、横田さんが予約してくれてた高級ホテルの最上階にあるフレンチのレストランへ……
恥ずかしながらフランス料理、初体験!
おっかなびっくり足を踏み入れるとそこはセレブの世界。全面ガラス張りの窓の向こうは煌びやかな夜の街。
案内されたテーブルでは、なんとイケメンのギャルソンのお兄さんが椅子を引いて座らせてくれた。思わず丁重にお礼を言ってしまい横田さんに笑われてしまう。
そして、真っ白なテーブルクロスの上に並べられた大小のフォークとナイフ。柔らかな炎が揺れるキャンドル。当然、私の緊張はマックスだ。