この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

片側一車線なのに、さっきの車と平行して走るポルシェ。


逆走じゃないかってオロオロしていたら、前から車が来た。


驚いた対向車が慌ててブレーキを踏むと、その少し空いた狭い車間から敵の車の前に出る。


「ミーメ、前を取ったぞ!」

「そんなこと、いちいち報告しないでいいからぁ~車を止めてー」


私の言ってることなど耳に入らぬ様で、銀はバックミラーに目をやると、常軌を逸した行動に出る。


いきなり急ブレーキを踏んだんだ。


キキキキィーーッ!!


「うおぉぉーっ……」


体が前のめりになり、シートベルトが胸に食い込む。


「オカマほってみろ! 2200万の弁償だ!」


悪魔みたいな顔をして、高らかに笑う銀。


ダメだ。銀、完全に壊れてる……


そんなことされて敵の車も黙ってはいない。ポルシェの後ろにピッタリくっ付くと激しくパッシングしてくる。


そして、ポルシェを追い越そうとして対向車線に出た敵の車。それを確認した銀がまた不敵に笑った。


銀、何を企んでる?


敵の車が横に並ぶ寸前、銀が叫ぶ。


「ミーメ、ドアを開けろ!」

「な、何?」

「トロトロしてんじゃねぇ!早くドア開けろ!」


もうどうにでもなれと思って助手席のドアを開けた。しかし、私は自分の行動をすぐに後悔したんだ。


突然開いたドアを避けようとした敵の車がハンドル操作を誤り、路肩にタイヤを乗り上げた。そして、綺麗に一回転してひっくり返って止まった。


まさか……死んだ?


後ろを振り向くと大破した車から人が出てくるのが見えた。


あぁ~良かった。生きてる……


ホッとしてシートに深く体を預けるとドッと疲れが出て、あちらこちらが痛い。力入れて踏ん張ってたから筋肉痛だ。


「ざまぁ~みろ! 俺のミーメにふざけたマネしやがって……生きてるだけ有り難いと思え!」


えっ、俺の……ミーメ?


私の為だったの? 私が怖い思いしたから銀はあんなに怒ったの?


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