この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
車が廃車になったあの人には悪いけど、何気にウルウル。
そう言えば、昨夜一睡もしないで私のこと待ってたって言ってたな……それに、えっと、なんだ……大人になった私を……その、見たいって……
イヤン! 銀ったら、何を見たいのよ~でもそれって、私のこと本気で好きってことだよね?
あれこれ妄想していると「おい、着いたぞ」と銀の声。車窓越しに見えてきたのは、今まで見たことも無い大豪邸だった。
「ここ、どこ?」
「俺の家だ」
「またまたぁ~」
「ミーメが来たいって言うから連れて来てやったんだ。さっさと降りろ」
まるで要塞みたいな高い塀に囲まれたお屋敷。鉄柵の門をおっかなびっくり入ると思わず目が点!
だだっ広い庭には、バラのアーチなんかがあって、デカい噴水が間欠泉みたいに噴出してる。
で、反対側の庭には、訳の分かんない木が何十本も枝を広げ、これまた、訳分かんない植物が色とりどりの花を咲かせてる。
玄関に続く道の周りは果てしなく芝生が広がっていて、不気味な置物がびみょ~な間隔で置かれてた。
「銀、あの置物キモい……」
「あんまり見ると呪われるぞ」
「マジっすか?」
「嘘に決まってんだろ。気にすんな。親父の趣味だ」
親父?
「銀、お父さんと暮らしてるの?」
「……あぁ」
私のボロアパートに居た時、銀は確かに言っていた。父親が戻って来いって言ってきたけど、戻るつもりはないって。
「どうして? あんなに嫌がってたのに……」
不思議がる私の顔をチラリと見た銀が小さなため息をつく。
「話すと長くなる。めんどくせーから、また今度……」
「何よ! ケチ」
まぁ、だいたい見当はつくけどね。どうせお金目当てなんでしょ? 贅沢三昧で育った銀が貧乏暮らしなんて所詮無理だったのよ。
こんな豪邸で暮らせるなら、ちょっとくらい嫌なことあっても我慢しちゃうよね。
やっぱ、世の中金か……