この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
玄関にたどり着くと銀が重厚な扉を開ける。
「入れ」
「うん……」
て、これが玄関? 私の部屋より遙かに大きい。
頭上の天窓から降り注ぐ日の光に反射した真っ白な大理石の床がキラキラ輝いていて、目の前には、お店の開店祝いでも見たことが無い豪華な生け花がドン! と置かれている。
「すごーい。綺麗……」
「ただの花だ。こんなモン、腹の足しにもならねぇ。腹減ったからメシ食うぞ」
銀はそう言うと広い廊下を歩き出す。
「ま、待ってよー」
慌てて銀を追いかけ、キッチンらしい部屋に入ると業務用みたいにデカい冷蔵庫とアメリカ映画に出てくる様な豪華な木目調のシステムキッチンが現れた。
冷蔵庫を開け、中を物色していた銀がタッパを片手に私を呼ぶ。
「ミーメもメシ食ってないんだろ? 食えよ」
「うん。でも、こんなとこで食べないで、テーブルで食べたら?」
「あんなでっかいテーブルで食っても旨くねぇし……ここが丁度いい」
「そう……」
調理台をテーブル代わりに作り置きしてあった料理を並べる。どれもこれも美味しそうで、私のテンションは急上昇。
いかにもお金持ちが好みそうな洋食メインの料理をガッついてたら、銀がボソリと言う。
「なぁ、味噌汁作ってくれねぇか?」
「えっ? こんなに豪勢なおかずあるのに? ほら、コンソメスープもある」
「俺は、味噌汁が飲みたいんだ」
「あ、そう……分かった」
銀と一緒に暮らしてた頃、毎日作ってた味噌汁。ほとんど具なんて入ってなかったけど、銀はいつも美味しそうに飲んでくれていた。
慣れないキッチンで作った味噌汁を銀は昔と同じ様に美味しそうに飲んでる。
「お味噌が違うから味違うでしょ?」
「まぁな、味なんてどーでもいいんだ」
「はぁ? それって、作った私に失礼じゃない?」
ふて腐れて、ぷーっとほっぺを膨らませると銀は静かに笑いながら言ったんだ。
「ミーメが作ってくれたのが飲みたかったんだよ……」