この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
どひゃ~! 茜ちゃん、何を言ってくれるのぉ~
私やママ達がぶったまげて言葉を失う。
「銀ちゃんですって? あなた、沢村部長を知ってるの?」
私が橋倉さんに見えない様に、必死に両手でバッテンを作ったにも関わらず、橋倉さんの問いかけに得意げに鼻を鳴らす茜ちゃん。
バカ! 余計なこと言うんじゃない!
周りが焦りまくっているのに全く空気が読めない茜ちゃんは、とうとう言ってしまったんだ。
「えぇ、知ってるわよ。だって、銀ちゃんはミーメちゃんの彼氏だもん。昔、同棲してて別れたんだけど、最近よりが戻ったそーよ。今はラブラブなんだからぁ~」
「えぇぇっ……?」
橋倉さんの刺す様な視線が私に向けられ、私の体中の毛穴という毛穴から大量の汗が吹き出す。
「神埼さん、どういうこと?」
「あぁ~…なんか、酔っ払っちゃったなぁ~」
「神埼さん! 誤魔化さないで、ちゃんと説明して!」
「……ぐぐっ」
顔を上げることが出来ないでいる私の変わりに、キャサリンママがため息交じりに事情を説明してくれた。
「お姉さん、茜が言ったことは本当のことよ。沢村銀之丞さんとミーメちゃんは恋人同士。あなたには辛い事実かもしれないけど、ふたりは愛し合ってるの」
「そんな……」
「色んな事情があってね、一度は別れたんだけど、結局お互いを忘れられなかったのよ。どうかミーメちゃんを責めないであげて……」
困惑の表情を見せ、戸惑ってる橋倉さん。
当然だよね。本音を話した相手が、実は恋敵だったんだもん。
私の心は罪悪感で一杯だった。
すると橋倉さんは、落ち着いた口調で全てを話して欲しいと私の顔を覗き込む。
そう言われても、橋倉さんの気持ちを考えると本当のことを言うべきなのか迷っていた。
その時、悪いことは重なるもので、店の奥のドアが開き華が現れたんだ。
「ミーメさん、怖い夢見た。眠れないよ……」