この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
私の元に駆け寄り抱きつく華。
「華……」
「はな?」
「あ、この子の名前、華なんです」
華を抱き上げ膝の上に乗っけると橋倉さんが小首を傾げ「誰のお子さん?」と聞いてくる。
「それは……」
「このお店に勤めてる方の子供?」
するとまた、あのKYの茜ちゃんがしゃしゃり出てきて余計なことをのたまう。
「もう~お姉さんったらぁ~おかまが子供産めるワケないでしょ!」
「あ、そうか……」
橋倉さんはまだ気付いてない。でも、ここまでバレたら華のことを知られるのは時間の問題だ。それに、この人なら華のこと話しても大丈夫のような気がする。
私は意を決して橋倉さんの顔を真っ直ぐ見つめた。
「橋倉さん、この子は、私の子供なの……」
「えぇぇーっ! 神埼さんの子供?」
椅子からズリ落ちそうになりながら、必死の形相で私の腕を掴んだ橋倉さんが絶叫!
「そうなの……ほら、華。ご挨拶は?」
眠そうに目をショボつかせながら、華がペコンと頭を下げ「こんばんは、神埼華です」と言うと、橋倉さんもソレを認めるしかないと思ったのか、か細い声で華に話し掛ける。
「そう、華ちゃんっていうの? 私の名前も華なのよ」
「えーっ! そーなの? おんなじだ~」
笑顔の華の頭を橋倉さんが優しく撫でてくれた。
「ごめんね。華、私、この人と大切なお話しがあるから、もうちょっとひとりで寝ててくれる?」
「え~ヤダー」
ゴネる華を軽々と持ち上げたのはミミさん。
「華ちゃん、今日はミミさんが中東和平問題の本を読んであげる。だから一緒に寝よ?」
「ホント? うん、ミミさんと寝る~」
中東和平問題……? いったい、どんなこと書いてある本だ? てか、そんな本あったのか?
機嫌良くミミさんと店を出て行く華を見送り、私は再び橋倉さんと向かい合う。
「橋倉さん、もう一つ、話しておきたいことがあるの」