この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「話し?」
「華の父親のことです。華の父親の名前は、沢村銀之丞……部長なの」
「「ええぇーー!!」」
驚いたのは橋倉さんだけじゃなかった。ママも、他のおかまちゃんも同様に声を上げる。
「ミーメちゃん、いいの? 会社の人にそのこと話しちゃって」
ママは真っ青な顔して詰め寄って来る。
「そーですよ! 会社辞めなきゃいけなくなったらどうするの?」
茜ちゃん、アンタに意見されたくない。
「大丈夫。橋倉さんは信用出来る人だと思ったから話したの。それで会社にバレてクビになったって大したこと無いよ。また、どっか探せばいいんだから」
「でも、銀ちゃんにも言ってないことなのに……」
ママの言葉に橋倉さんが反応する。
「それ、ホントなの? 部長は自分が華ちゃんの父親だって知らないの?」
「なんか言えなくて……」
「どうして? 付き合ってるんでしょ?」
「だから言えないのかも……華のこと言ったら、きっと銀は怒る。彼に黙って産んだ子だから。多分、私は怖いんだと思う。また銀を失うのが……」
「神埼さん……」
「だからお願い。このことは橋倉さんの胸に納めといて欲しいの。華は銀が大好きで、いつも銀が来るのを待ってる。銀が来なくなったりしたらどなに悲しむか……」
頭を下げる私に橋倉さんは大きく頷いてくれた。
「有難う。橋倉さん」
「心配しないでいいわよ。このことは、絶対会社の人には言わないから。でもね、華ちゃんのことは部長に話すべきだと思う。
黙ってる方が残酷よ。大丈夫。部長なら受け入れてくれるはずよ」
いつの間にか私の方が橋倉さんに励まされてる。
「でも、やっぱりショックよね。部長の彼女が神埼さんだってことにも驚いたけど、まさか子供まで居たとは……」
「……ごめんなさい」
「うぅん。でも、神埼さんで良かったかも……他の女子社員だったら、こんな気持ちにはなれなかっただろうし」
「どんな気持ちっすか?」
「応援してあげようって気持ちよ」
「あぁ、橋倉さん……」
「いい? その代わり、絶対会社にはバレない様にするのよ。もしバレたら……あなたのこと呪い殺すから」
ゾゾゾッ……
その後の橋倉さんは高いお酒をガブ飲みし、ベロンベロンに酔っ払いお金も払わず帰って行った。