この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
PART THREE
●疑惑
ーー次の日……
橋倉さんと顔を合わすのがちょっぴり気まずかったけど、彼女はいつもと変わらず接してくれた。
ランチの時間まであと少しという時、銀がオフィスに顔を出し、私のデスクの上にさり気なくメモを置く。そして、何事も無かった様に私から離れていく。
《今日のランチは、エビフライが食いたい。"洋食屋SORA"に来い》
"来い"なんて、相変わらず高飛車なヤツだ。
私はそのメモを橋倉さんに見せ「一緒に行こう」と誘う。が、彼女は首がどっかに飛んでっちゃうんじやないかと思うくらいブンブン横に振る。
「遠慮します」
「どうしてですか? いいじゃないですかー行きましょうよ」
嫌がる橋倉さんを無理やり『洋食屋SORA』に連れ出し銀を待っていると……
「なんで橋倉君が、ここに居る?」
「私が誘ったの」
「ほほーっ……」
リアクション薄っつ。
「やはり、私は失礼します」
いきなり立ち上がった橋倉さんの腕を銀が掴み「せっかくだから食ってけば?」なんて優しく微笑むものだから、橋倉さんは体の力が抜けた様にストンと椅子に腰を下ろす。
「ほ、本当に、いいのかしら? 私なんかがご一緒して……」
「別に問題ない」
「有難うございます」
緊張気味の橋倉さんがソワソワしながら汚れてもいないテーブルを意味も無くおしぼりで拭きまくる。
「橋倉君、そんなに拭いたら、テーブルがすり切れるぞ」
「は、はい。すみません」
このふたりを観察してると結構、面白い。
「あ、そうだ。銀、私達のこと、橋倉さんに話したから」
「なんで?」
「なんとなく……」
「全部か?」
「ほぼ、全部」
「じゃあ、俺の最高のテクニックも事細かに話したのか?」
「な、そんなの言うワケないじゃん! バカ!」