この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「『エデンの園』ってゆーレストランの2階に住んでるの!」
「……レストラン?」
「そう!」
まさかオカマバーだなんて言えない。
「ふ~ん」
"ふ~ん"って、リアクション薄っ!
「まぁ、いい……」
なら聞くなよ!
次こそ華のこと聞かれる……そう思ったのに、銀の質問はそれで終了。
私の履歴書には、配偶者は無しだけど、扶養家族はひとりと書いてあったはず。目ざとい銀が見落とす訳ないのに……どうして何も聞いてこないんだろう。
すると銀は突然電話の受話器を取り、誰かを呼び出す。
程なくして現れたのは、瞼全体に真っ青なラメラメキラキラシャドー。そんでもって、真っ赤な口紅にグロスを塗りたくった女性。
髪はクラブのママみたいにきっちりセットされたアップだ。
髪型は許せても、そのメイク頂けないなぁ〜年は30代前半ってとこか?
「沢村部長、お呼びですか?」
「あぁ、この新人の教育係を任せる。クセのあるヤツだが、宜しく頼む」
クセのあるヤツ? それって、私のこと? クセだらけのアンタにだけは言われたくない!
「分かりました。神埼さんですよね? 私は橋倉華。宜しく」
「は、はな?」
「……いきなり呼び捨てですか?」
真っ青なシャドーの奥の瞳が鈍く光る。
ヤバッ……でも、こんなケバい人と娘の華が同じ名前だなんて、華ちゃん可哀そ~
「すみません……知り合いと同じ名前だったもので……」