この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
頼んだ料理がテーブルを埋め尽くし、本当なら至福の時のはずなのに、この険悪なムードは、なに?
元気がいいのは赤毛さんのみ。橋倉さんは、この状態の意味が分からずオドオド。銀に関しては、終始ブスーっとして一言も喋らない。
「念のために聞くけどさ、沢村部長と桃尻ちゃんは、ホントに付き合ってないんだよね?」
「当たり前じゃない!」
「そう、じゃあ、俺と付き合ってもいいワケだ」
「え゛っ?」
なんで、そうなる?
「俺の部下に手出したら許さねぇ……」
「ははは…部下? 女と付き合うのに、わざわざ上司の承諾がいるの?」
「いる」
「そんなバカげたこと、誰か決めたの?」
「俺だ」
「話しになんないよなぁ~ねぇ、桃尻ちゃん」
て、私にふるな! ハンターの様な目をした銀が私を睨んでるじゃない。
すると橋倉さんが申し訳なさそうに、小声でボソリと言う。
「でも、社内恋愛は禁止ですから……」
「橋倉さんだっけ? それは心配いらないよ。社内恋愛がバレても、俺は左遷なんかされないから。左遷されたとしても、俺を左遷したヤツがクビになるだけだ」
出た! 思い上がりのドラ息子!
「私、親の七光りで出世する男なんて興味ない」
「なにぃ?」
ちょっと言い過ぎかなって思ったけど、このくらいハッキリ言ってやらないと赤毛さんは気付きそうもない。
「そういうことだ。残念だったな、椎名部長。もう帰れよ。お前が居ると場がシラける」
自分が圧倒的に不利だと感じたのか、赤毛さんが徐に席を立つ。
「なんか、他のフロアの飲み会はつまんねぇーな。たったの3人だし……でもまぁ、収穫はあったら来て良かったよ」
負け惜しみか? それとも、何か感づいたのか? 赤毛さんは意味深な笑いを残し店を出て行った。