この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
危なかった~
身の危険を感じた私は、橋倉さんが電話をしてる隙を狙い廊下に避難。ついでにトイレに行こうと歩き出す。すると誰かが私の名を呼んだ。
振り返るとそこに立って居たのは、銀の元補佐。社員食堂で私にイチャモンをつけてきたお色気ムンムンの女、田村さんだった。
「なんっすか?」
「あなたに大事な話しがあるの。今日仕事が終わったら、そこに来てくれる?」
そう言って指差した場所は、会議室。
「別に今でもいいですけど?」
「長い話しになると思うから……じゃあ、忘れず来てね」
気持ち悪いくらい愛想良く満面の笑みを浮かべ去って行く田村さん。なんだか、凄く嫌な予感がする。
でも、そんなことより、私はもっと大変な問題を抱えてたんだ……
華のこと、銀にどうやって切り出そう。いきなり華が自分の子供だなんて言われたら、流石の銀も動揺するだろうな~
徐々にそれらしいこと言って、悟らせた方がいいのかな?
それに、問題は銀だけじゃない。華にも本当のこと言わなきゃいけない。銀に恋してる華が素直に納得してくれるか……不安だ。
うぅ~っ、頭が痛い。
そんなことばかり考えていたら、あっと言う間に終業時間。手早くデスクの上を片付け、オフィスを出た所で思い出した。
そうだ。田村さんに会議室に来るように言われてたんだ。危ない、危ない。すっかり忘れて帰るとこだったよ。
ソッと会議室のドアを開けると茜色の夕日が差し込む窓際に彼女は居た。
「あの~」
「約束守ってくれたのね。ありがとう」
また、あの笑顔だ。
「話しって、なんですか?」
「取り合えず、座ってくれる?」
夕日のせいだろうか? 田村さんの大きな瞳がキラリと光った様に見えた。