この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

銀の意思を無視して進められてる話し?


「そんな企業の極秘事項を、どうして一般社員の田村さんが知ってるの?」


取り乱す私を横目に、田村さんは憎らしいほど落ち着き払ってる。


「悪いけど、私とあなたを一緒にしないで欲しいわ。同じ一般社員でも、私のバックには大きな権力を持った人がついてるの。情報はすぐ耳に入ってくるわ」

「銀は、部長は、会社を裏切る様な、そんな酷いことするもんですか!」

「甘いわね。男っていう生き物は野望の塊なのよ。地位と名誉が目の前でチラついたら、食いついてくる。部長だってそうよ。例外じゃないわ」


何よ、その自信満々の顔は?


「分かったら大人しく部長と別れることね。素直に別れたら、あなた達のことは口外しないし、部長が関わった神埼さんの履歴書詐称も黙認してあげる。

そうすれば、部長はこの会社で出世して、2年後には新たな会社で重要なポストの座に就ける。

でも、あなたが断れば、相手の会社の要求をかなり呑まなければならなくなって交渉は少々不利になるわね。

どちらが部長の為になるか……そのくらい分かるわよね?」


黙って聞いてれば、好き勝手なことばかり……


「田村さんに、そんなこと言われる筋合いはない!」

「はぁ~これだけ言ってもまだ分からないの? あなた、部長の輝かしい未来を潰すつもり?

神埼さんは部長に何をしてあげられるのよ。彼が望むこと叶えてあげられるの?

あなたみたいな貧乏神と居ても、部長は幸せにはなれない。けど、私ならそれが出来る。彼が欲しいと思うモノ、全てを与えてあげられるわ」


田村さんはタバコを灰皿に押し付け、乱暴に火を消した。


私は震えの止まらぬ手を握り締め、ただ、田村さんを睨むことしか出来なかった。


腹立たしさは、もちろんあった。でもそれ以上にショックだったのは、私は銀に何もしてあげられないという事実。


いつも心配かけて、迷惑かけて、怒らせてばかり。


銀にとって私は、ホントに必要な人間なんだろうか?


そんな揺れ動く心に止めを刺したのは、田村さんの思いもよらぬ一言だった。


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