この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「そうだ……部長の言ってた"最悪な女"って、あなたのことだったのかしら?」

「最悪な……?」

「そうよ。昔、困ってた自分を助けてくれた女が居て、仕方ないから暫く付き合ってやったけど、性格が悪くて最悪な女だったって……

でも、自分は借りを作るのが嫌いだから、また会うことがあったら、それなりのことはしてやるつもりだって言ってたわ」

「うそ……」


そんなの嘘だ! 銀がそんなこと言うなんて……信じない!


「嘘なんかじゃないわよ」

「絶対、嘘だ! ただの補佐だった田村さんに、どうしてそんなプライベートな話しするのよ!」


溢れそうな涙を堪え、私はありったけの声で叫ぶ。


「彼ね、ベットの上でなら、なんでも話してくれるのよ」

「えっ……」


それがどういう意味か、鈍感な私でも容易に理解出来た。


「銀と……付き合ってるの?」

「ご想像どーり」


グロスで光る唇の奥からチラリと覗く白い歯。まるで銀のことなんでも知ってるみたいに笑う。


ソレを見た瞬間、昨夜、銀に言われた"愛してる"という言葉が色あせていく……


銀にとって、私は特別じゃなかったの? あんなに激しく抱いてくれたのは、借りを返す為?


何もかも信じられなくなり、涙が頬を伝う。


「返事は3日だけ待ってあげる。じっくり考えることね。部長のことが好きなら、彼の邪魔はしないこと……いいわね」


遠ざかるピンヒールの音が胸に突き刺さる様に響き、暫くそれが耳から離れることはなかった。


私はまた、銀に捨てられるの? 答えて……銀……

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